アヤ・ソフィア遠景
アヤ・ソフィア遠景

 

 

修復中の大ドーム
修復中の大ドーム

 

二階通路へ続く部屋
二階通路へ続く部屋

 

イエス・キリスト
イエス・キリスト
(請願図より)

 

聖母子とローマ皇帝
聖母子とローマ皇帝
(左がユスティニアヌス、右がコンスタンティヌスのはず)

 

◎アヤ・ソフィア

 先ほども書いたが、今日最初に行くのは、ビザンティン時代に建設された、「イスタンブールといったらこれ!」 とも言うべき、アヤ・ソフィアだ。ギリシア語風に言うと「ハギア・ソフィア」。 日本語で言うと「聖なる知恵」。 意訳すると「上智」 になる。ここの説明は他の本にいっぱい書いてあるので省略するが、要するにビザンティン時代に建てられた大聖堂である。大きさもさることながら、所々に残されたモザイク画でも有名なところだ。

 初めに入り口でセキュリティーチェックを受ける。時々テロが起きる土地柄なのと、文化財のためにしょうがないのだろうな。今日はあちこちでこれを受けた。

 中に入る。最初にハドリアヌス帝の建設したローマ帝国(といっても、ビザンティン帝国という呼称自体、無理がある。一応この国は1453年の滅亡まで、正式には「ローマ帝国」である。)時代の聖堂跡を見る。その辺に無造作に飾られ(放置か?)ている大理石の柱も、オルハンの言によれば、その時の物らしい。今よりずいぶん地表面が深い。中国の宋時代の開封は、現代の地表の遙か下に埋まっているらしいが、ここでも数メートル下に柱の基礎がある。昔住んでいた下宿の近所から、平安京大極殿跡が確認されたが、あれはそんなに深い所じゃなかったような記憶がある。色々あるんだろうね。事情が。

 中に入る。第一印象は「痛んでるなあ〜」。 大理石や煉瓦がベースの建物なのだが、所々石が摩滅している。それもそうだ。何せ建立が六世紀半ばときている。日本だと大化の改新があった時期だ。法隆寺も真っ青の建物なので仕方がない。外回廊から内陣に入る入り口にモザイクがある。ずいぶん高いところに掲げられている。ビザンティン皇帝の寄付によるものらしいので、日本の絵馬みたいな性格なんだろうね。

 内陣に入る。う〜ん、天井が高い。ローマの伝統を引くドーム建築なので、内部空間が非常に広い。日本のお寺の大規模建築も大したもんだなあ、と思っていたが、やはり世界の中心だった国家の建築物はけたが違う。今度北京に行く機会があったら、是非紫禁城と比べてみたいと思った。修復作業中だったので、天井ドームの全体像は把握しづらかったのだが、折角足場があるのだから、私も登らせて欲しかったぞ!

 ここは元々ギリシア正教の総本山だったのだが、1453年のオスマントルコによるコンスタンティノープル征服直後、モスクに改造された。その痕跡は今も残っており、キリスト教の教会と言うより、どちらかと言えばモスクの色合いが強い。外部のミナレットやメッカの方向を指すミフラーブ等、あちこちに見られる。辛うじて漆喰の中から発見されたモザイク画や、フレスコ画の文様にキリスト教時代の名残が見られる。

 空間が広いので、さぞかしいい響きがするだろうなあと思ったが、余りに観光客が多いので唱うのは止める。一階をうろついていると、有名な湿った柱に案内される。ここに空いたくぼみに指を通して、無事一回転できたら望みが叶うんだそうな。そのおかげで、柱はすっかりくぼんでいる。まあ天神さんの牛に近いんだろう。当然我々は、無理矢理一回転させたが・・・ (^_^;)

 二階に上がる。階段ではなくスロープなのだが、ここの入り口を見つけるのにちょっと苦労した。目立つ案内もなく、通路も薄暗く、しかも内陣と比べて補修もされていないようなので、本当にここでいいか迷ったぐらいだ。おかげで当時そのままの雰囲気は味わえたが。

 二階に着く。奥さん、何せ二年越しなので非常に嬉しそうだ。一階より観光客が少ないため、妙に開放的だ。あちこちうろつく。写真を撮りまくる。フラッシュ禁止なので、予め高感度のフィルムを装填済みだ。抜かりはない。ガイドブックや資料集に載せられているモザイク画は、殆どこの二階にある。ドームに設けられた窓から射す光がまぶしい。ある程度宗教的効果もねらっているんだろうが、金色がベースのモザイクに反射すると、きらきらと反射して非常に綺麗だ。モザイク自体「もっと大きい物かな?」 と考えていたが、思ったより小振りだ。しかし、その精緻さは「さすがビザンティン芸術だ!」 と呻らせるに足る代物揃いである。うん、いい物を見た。

 一階に下り、集合時間まで時間をつぶす。ここはモザイクで有名だが、個人的に感心したのは、大理石の使い方の巧みさである。大理石というと日本人はすぐ「白」 を連想する。確かにエフェスは真っ白かった・・・ しかし、大理石の中には不純物が混じって美しい文様を描き出したものや、色が付いているものもある(エフェスにも在ったらしいが、貴重なものだったらしく、あちこちに持っていかれたそうな。)。ここの文様は、大理石を割った時に出来る対象な状態を上手に利用したり(ロースシャッハテストを思い出してしまった)、色大理石を巧みに組み合わせるなどして、非常に美しい様相を見せている。ガイドブックでは全然紹介していないが、こっちの方にも着目して見ると面白いかも。やっぱり現地には来てみるもんだ。勉強になったよ。うん。このセンスは、日本人にはまねできない代物だろうね。お国柄というか、志向性の違いだろうな。

 さて、みんなが集まったので外に出る。出口の付近に鏡がある。「なんでだろうなあ〜」 と思ってのぞき込むと、そこにはモザイク画が! しかも一番有名なやつではないか! う〜ん、気が付かない人のための親切だろうが、やられた。有り難う。これで思い残すことはない(ここではね)。


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